ISO/TC94/SC14 東京会議報告

帝人株式会社 鈴木 崇弘


出典: 公益財団法人日本防炎協会


ISO/TC94 個人安全─個人用保護具(Personal safety protective equipment)/SC14 消防隊員用個人防護装備(Firefighters’ personal equipment)/WG’s(ワーキンググループ)&PG(プロジェクトグループ)会議

主催: TC94 / SC14国内対策委員会(消防防護装備研究会)
共催: (一社)日本消防服装・装備協会
協賛: 帝人㈱、エア・ウォーター防災㈱、デュポン・スペシャルティ・プロダクツ㈱、(公財)日本防炎協会、㈱赤尾、アゼアス㈱、小林防火服㈱、櫻護謨㈱、㈱チクマ、帝国繊維㈱、東洋紡㈱、東レ㈱、㈱トンボ、日本毛織㈱、日本ゴア㈱、船山㈱
事務局: オーストラリア規格協会(Standards Australia)

Ⅰ. 会期及び場所

日程: 2018年6月4日(月)~ 8日(金)
会場: タイム24ビル 141会議室(東京都江東区青海2丁目4番32号)

月日 曜日 AM PM
6/4 WG1<一般要求事項>:
・SUCAM
JWG1:
JWG:SC13/14 CBRN
6/5 WG2<建物火災>:
・ステーションユニフォーム
WG2<建物火災>:
・ISO/CD 11999-10呼吸保護具
6/6 WG4<HAZMAT(危険性物質)>:
・ISO 17723-1 危険物対策活動用防護装備
東京消防庁・第三方面消防本部
見学
6/7 WG1<一般要求事項>:
・ISO 13506 サーマルマネキン
・消防個人装備向け新規クリーニング・メンテナンス規格
WG2<建物火災>:
・ISO 11999-9 ファイアフード
WG3<原野火災>:
・ISO 15384 原野火災用防護服
・ISO/NP 16073 原野火災個人防護装備
6/8 WG5<レスキュー>:
ISO 18639 交通事故救助、都市型捜索救助
SC14:全体会議(プレナリー)

Ⅱ. 会議参加者(敬称略・順不同) 合計86名

1. 日本・Convenor, PG leader or Secretary(6名)

小林寿太郎(小林防火服㈱)、石川修作(㈱赤尾)、渡辺光史(一社・日本ヘルメット工業会)、池田信一郎(デュポン・スペシャルティ・プロダクツ㈱)、久保徹也(日本ゴア㈱)、通訳:神元郁子(㈱TOPランゲージ)

2. 日本・Participating(17名)

仙波明(消防庁)、布川賢治(消防庁)、臼井正人(東京消防庁)、有海正浩(東京消防庁)、永堀誠(東京消防庁)、冨澤延光(東京消防庁)、熊谷慎介(アゼアス㈱)、園部修(帝国繊維㈱)、鈴木崇弘(帝人㈱)、辻創(一財・ カケンテストセンター)、城田剛(櫻護謨㈱)、小田切晋平(日本毛織㈱)、三橋卓也(一財・カケンテストセンター)、山本文彦(エア・ウォーター防災㈱)、鷲山茂雄(㈱ナカヒロ)、篠原克明(国立感染症研究所)、山内正剛(放射線医学総合研究所)

3. 日本・Observer(33名)

小林恭一(東京理科大学)、髙松益樹(全国消防長会)、稲継丈大(全国消防長会)、篠崎信介(全国消防長会)、萩原正之(さいたま市消防局)、杉山学(さいたま市消防局)、堀江潤(㈱服部商店)、岡部孝之(日本毛織㈱)、田先慶多(日本毛織㈱)、鈴木裕生(アゼアス㈱)、板野直樹(エア・ウォーター防災㈱)、横山昌司(エア・ウォーター防災㈱)、今荘和宏(㈱イマジョー)、川口剛志(㈱イマジョー)、前田昭夫(帝国繊維㈱)、中村浩士(櫻護謨㈱)、川崎哲治(櫻護謨㈱)、岩下憲二(帝人㈱)、北村篤士(帝人㈱)、Luo Constance(Teijin Aramid B.V.)、安井一弘(小林防火服㈱)、鈴木学(小林防火服㈱)、鈴木啓太(小林防火服㈱)、副島圭(小林防火服㈱)、濱島光男(小林防火服㈱)、赤尾隆(㈱赤尾)、和田武裕(㈱チクマ)、木村裕彦(㈱アライヘルメット)、石山満(公財・産業安全技術協会)、古市輝子(㈱TOPランゲージ)、人見浩司(公財・日本防炎協会)、 大森俊介(公財・日本防炎協会)、坪谷奏子(公財・日本防炎協会)

4. 海外(30名)

Russell・Shephard(オーストラリア)、Manjoo・Lalwani(オーストラリア)、Mark・Gribble(オーストラリア)、Caleb・Yap(ニュージーランド)、周凱(上海消防研究所)、李躍偉(上海消防研究所)、Zhu・Qing(SAC(中国)、Jin・Junchao(中国)、Zhou・Shunxing(中国)、Zhang・Kun(中国)、Huang・Yichun(中国)、Steven・D・Corrado(アメリカ)、Diane・Hess(アメリカ)、Tim J.・Gardner (アメリカ)、Rick・Swan(アメリカ)、Arthur・Tindall(アメリカ)、Geoff・Betsinger(アメリカ)、Mike・Stanhope(アメリカ)、Neil・Sorensen(イギリス)、 Richard・Ballheimer(イギリス)、David・Frodsham(イギリス)、David・Matthews(イギリス)、Thomas・Manek(オーストリア)、Dirk・Hagebölling(ドイツ)、Vera・De・Glas(ベルギー)、Eric・van・Wely(スイス)、Ulf・Nyström(スウェーデン)、Julien・Hollingshurst(イギリス)、John・Morris(アメリカ)、Jacques・Cantin(アメリカ)

Ⅲ. 会議内容

冒頭、東京消防庁 臼井参事より会議参加者に対する歓迎の意と会議開催の挨拶がなされ、会議を開始した。

1. WG1:一般要求事項

議長:デイブ・マシューズ氏(イギリス)

(1)SUCAM(個人用保護具の選択・使用・手入れ・メンテナンスの手引き)について

議長:デイブ・マシューズ氏(イギリス)

ISO TR 21808 SUCAMの更新について議論が進められた。

コメントは米国・日本からのみで、日本から16件のコメントを出した。その内容について池田氏(デュポン)より説明。以下、ポイントを抜粋。

  1. Scopeに関して、SC14では、水難救助、緊急時の医療、暴風・洪水時の対応といった装備品について、具体的に審議をしていない。この規格でこれらのアイテムをカバーすることはできないため、対象から外すべきという日本のコメントについて、文書内に残すと言う方向で決着。内容を後日、日本がチェックする。
  2. 「4.3最適なパフォーマンスの防護服」に関して、この規格は防護服に限らず各種防護装備のSUCAMについて規格化しているため、防護服のみを対象にした記述は望ましくないため、4.3を削除すべきとの日本のコメントについて。逆に他のPPEについての記述を日本より提案してほしいとの議長発言あり。
  3. 「4.10 コンパチビリティ」に関して、表で示している装備品間以外にもコンパチビリティを考慮する必要があり、この表ではコンパチビリティの必要な部分を十分に表現できない。また、装備品間で考慮しなければいけない箇所については、各装備品の製品規格で言及すべきで、現在平行して討議が行われているCompatibility規格または技術報告書にて規定すべき項目であるとの日本のコメントについて、表は削除せず、将来的にはよりよい表に更新していくと議長決済。日本としては内容をチェックさせてほしいということで了承した。

今後、3人の作業者で案を作り、10月までにセカンドCIB投票にかけ、コメントを集めることとなった。

(2)サーマルマネキン ISO 13506

デュポン(スイス)のエリック・ヴァン・ウェリー氏より、2016年からのサーマルマネキンのラウンドロビンテストの結果報告と、2018年以降のラウンドロビンについての説明がなされた。なお、規格自体は2017年7月にISO 13506-1, -2が既に出版されている。

2018年1月米国マサチューセッツ州Natickにてラウンドロビン参加者でミーティングを実施。ラウンドロビンには14の試験所が参加しており、世界のほとんどの地域をカバーしている。センサーのキャリブレーションなどを協議。

2018年以降のラウンドロビンについては、2017年出版のISO 13056の影響を確認することや、実際に衣服(ガーメント)を使用したテストを実施して、各測定機関の間のバラつき(標準偏差)が10%以下となること目標とする。スケジュールとしては、2019年9月までにラウンドロビンを実施し、結果を受けて2020年に出版することを目標とする。

(3)消防個人装備向け新規クリーニング・メンテナンス規格

議長より、新規提案(NWIP)として消防個人装備のクリーニング・メンテナンスについてのISO規格の制定の必要性が説かれた。類似の規格はNFPAでは既存であるが、他には存在せず、国際規格を作る必要があるとの考え。まずはSUCAMで始めるという意見もあったが、SUCAMに組み込むとそのパートが膨大となり、また非常に重要な内容であることからも独立して規格成立を進めることとなった。課題としては、①技術的なハードル、②実運用上の実施者の問題(クリーニング業者なのかユーザーなのか)が挙げられた。

NWIPでスタートすることについて、採決の結果、賛成多数、反対ゼロでスタートすることが決定。投票にかけ、PGを作ることとなった。

(4)スウェッティング・トルソー EN ISO 18640-1, -2

消防用防火服の生理学的影響の評価方法である、スウェッティング・トルソーの規格ISO 18640について、-1が出版され、-2は間もなく出版される。

2. WG2:建物火災用消防隊員個人防護装備

議長:デイブ・マシューズ氏(イギリス)

議長より、昨年ISO 11613(屋外消火活動用防火服)が出版されたことが報告され、PGリーダー小林寿太郎氏はじめ日本の貢献に対し感謝が述べられた。

(1)PG:消防士用ステーションユニフォーム

議長:マーク・グリブル氏(オーストラリア)

既に賛成多数で承認されているCD 21942に対する各国からのコメントについての議論がなされた。コメント総数が140以上あることからもCD案の完成度は低いと言える。国内対策委員会で協議した事項のうち、ポイントとなる2点について下記の結果となった。

  1. 「Scopeに救急隊と消防団は含めない」というコメントについて、議長からは様々な活動で着用する服を想定しているため、日本のコメントのように限定的にすることはできないと発言あり、拒否された。
  2. レベル分けの是非については、スイス提案のとおり、レベル0とレベル1の2つにレベル分けをすることとなった。レベル0は溶融しない事がポイントで、耐熱性などの要求事項のほとんどはオプションである。レベル1については、ISO 11999-3の積層としても使えるものを想定しているが、あくまでStation Wear単独で規格を作り、ISO 11999-3の積層とする場合は、そちらの規格に従って適否を確認するという考え方。
    7末までにスイス・米国が今回の協議内容を反映して規格を作り直し、CD2投票にかける。その後、10月22日からのジュネーブ会議で議論することとなった。
    日本としては、今回時間の都合上、十分な議論がなされていないスコープ部分について今後のCD2案の投票時に再度コメントをし、またより具体化するであろうCD2案の内容を精査して日本の不利益にならず、有用な規格とすべく注力していく。

(2)PG10:呼吸保護具

議長:デイブ・マシューズ氏(イギリス)

SC14及びTC94議長であるラッセル・シェパード氏より「One World One Standard(1つの世界には1つの規格)」として、SC14とSC15のJWG(合同作業グループ)として規格化をすすめていくとの方向性が示された。SC14(消防隊員用個人装備)及びSC15(呼吸保護具)の生い立ちの説明がなされた。

SC14では、議長としては、次の5つの規格化を考えている。

  1. ISO 11999-10(消防隊員用、建物火災用、呼吸保護具)(2019年8月までにDIS)
  2. ISO 16073-10(消防隊員用、原野火災用、呼吸保護具)、(2019年7月までにDIS)
  3. ISO 18639-10(消防隊員用、救助用、呼吸保護具)(まだ作成されていない)
  4. ISO 17723-1X(消防隊員用、危険物対策用、呼吸保護具)(まだ作成されていない)
  5. CBRN用(まだ作成されていない)

ISO 11999-10はCD1でまとまらずCD2であるが、コメントが多く寄せられている。一方で、SC15ではISO 17420シリーズを再構成して、消防用としてISO 17420-5が検討されている状況。JWGではこれらを解決していく必要がある。

JWGはSC15がリードして進め、期間は3年間とする。SC14としてはSC14/WG2議長であるデイブ・マシューズ氏をJWG議長として指名した。

(3)ISO 11999-9ファイアフードの更新について

WG3議長でもあるリック・スワン氏(米国)による、汚染物質の微粒子が及ぼす発癌リスクについての発表があった。

2015年に出版されて日が浅いISO 11999-3(防護服)と -9(ファイアフード)について、汚染物質からの保護を目的として更新するか否かについての議論がなされた。消防士の組合出身者たちはやるべしとして賛成しているものの、日本としては、まだ正式に学会で認められていない説を根拠にし、成立して間もないISO 11999を更新することには反対の立場を取った。議論全体の中で、服装とファイアフードのうち、後者の優先順位が高いということで、後者からスタートするということとなり、日本としては影響がより大きい服装についての着手が後に回ったことから、フードから更新をスタートすることについては容認した。

3. WG3:原野火災用消防隊員個人防護装備

議長:リック・スワン氏(アメリカ)

議長より、これまで議論されてきたISO 15384(原野火災用防護服)のセカンド FDISが承認され、これにより出版を待つばかりとなったことが報告された。

議長より、ISO 16073(原野火災用個人防護装備)の規格化について新規提案があり、次のとおりにPGリーダーが決定された。

ISO/NP 16073-1: 一般要求事項 アーサー・ティンドル氏 (豪州)
ISO/NP 16073-2: コンパチビリティ アーサー・ティンドル氏 (豪州)
ISO/NP 16073-3: 防護服 ヴェラ・グラス氏(ベルギー)
ISO/NP 16073-4: 手袋 カレブ・ヤップ氏(ニュージーランド)
ISO/NP 16073-5: ヘルメット カレブ・ヤップ氏(ニュージーランド)
ISO/NP 16073-6: 靴 トーマス・マネック氏(オーストリア)
ISO/NP 16073-7: 顔面・視覚保護具 スティーヴン・コラード氏(米国)
ISO/NP 16073-8: 聴覚保護具 トーマス・マネック氏(オーストリア)
ISO/NP 16073-9: ファイアフード エリック・ヴァン・ウェリー氏(スイス)

次のステップとしては7月に各CD(案)を8週間の期間で投票にかけることとなった。
ドラフトは類似規格からの引用で作成されるとのこと。2019年6月のオランダ会議、または2018年10月のジュネーブ会議でface to faceで議論される。

4. WG4:危険物(HAZMAT)対策活動用消防隊員個人防護装備

議長:ウルフ・ニストローム氏(スウェーデン)

現在DIS 17723-1を審議中で、最終IS登録締切は2019年7月8日。 前回ロンドン会議後、WG4の主要メンバーにて未解決部分の議論を行った。今回は残っている課題について最終の詰めの議論を行い、FDIS投票を実施するドラフトを用意した。

3.11「closure」の定義について、服を着用する際に閉めるための装置という定義を、閉めるだけでなく、開閉する装置と修正する。

5.2  耐透過性能について、日本より、服・手袋・フェイスシールド等のアイテムで要求水準が異なるので、服と同じ水準に統一するべきと発言し、了承を得た。

Annex A 実用性能試験を行う際の床のスムースさの規定について、Class 41とあるが、これがどの規格を参照しているのか不明であることを日本より指摘した。最終的には日本からISO 10874をはじめとした3つのISOを追加、現行記述のEN規格と代替することを提案し、了承を得た。

Annex F 化学テロ剤への耐透過性能試験で記述されている「FINABEL 0.7C」について、規定内容が不明のため、詳述するか、削除することを日本より主張した。議長より、ヨーロッパの複数のテストラボで実施可能であり、ただでさえ高い化学剤の試験コストを少しでも低減させるためにも、試験方法の選択肢を増やす必要があるとの返答があり、現状維持となった。 今後の動きとしては、今回の議論を踏まえてFDIS投票にかけるドラフトを作成、6月末までに回覧し、すぐにFDIS投票を行うこととなった。次回会議は2019年オランダでのSC14会議にて開催する。

5. WG5:非火災救助

ISO 18639(特殊レスキュー活動用消防隊員個人防護装備)

議長:石川 修作氏(㈱赤尾)

レスキュー向けの規格であるISO 18639について、次のPGごとの進捗を確認

-1:一般
-3:服装
-4:手袋
-5:ヘルメット
-6:靴

-1, -3, -6については出版済であり、-4, -5はFDIS投票が6月末頃に回覧開始される予定である。-7の顔面・眼保護についてはトーマス・マネック氏(オーストリア)がPGリーダーとなり、2018年12月までにCDを準備する。-8, -9は今のところ新たな動きをとらない。

今後のワークについて、RTC(Road Traffic Collision / 交通事故救助)とUSAR(Urban Search And Rescure / 都市型捜索救助)は着手済なので、今後はSwift Water Rescue(水難救助)を開始してはどうかとの意見があり、参加者からは概ね賛成の意見であった。なお、Swift Waterは豪雨によって発生するもので、流れの強い状況を指す。それに対して総務省消防庁 布川氏より日本の状況について説明を実施した。水難救助は水上と水中で分かれる。水中は潜水して救助する。都市部での洪水では感染防止も視野に入れる。泳ぐケースと泳がないケースとにも分ける。水の流れる速さで救命胴衣のタイプも異なる。以上のように水難救助と言っても多岐に分かれている。

上述の議論の流れよりスコープが重要であるとの認識で一致し、NFPA 1952のスコープを参考に進めれば良いとの意見が出された。今後はPGを作ることとし、PGメンバーとしてアメリカ、イギリス、オーストラリアからの立候補があった。PGでNFPAの文書をチェックし、次回ミーティングでレポートを提出し、進め方を決める。

6. SC13/14 JWG(合同作業グループ)CBRN(Chemical-Biological- Radiological- Nuclear / 化学・生物・放射性物質・核)に対する防護服

議長:デイブ・フロッシャム氏(イギリス)

議長よりScopeの原案が示され、その内容について協議を行った。SC13では同案は承認済であり、SC14でも承認を得て進めたいということである。

総務省消防庁 布川氏より次のように日本のユーザーの立場から規格の方向性について発言した。既にCBRN向けの製品は世の中に存在しているが、国際規格がないというのが現状と認識している。日本では、その都度の状況に対してリスクアセスメントをして、それに応じて適切な装備を選択する方針を取っている。具体的にはUNKNOWN の状況から活動が開始されることから、先ずは最高レベルの装備から始め、判明した状況に応じ装備レベルを下げて行き、それによって作業効率を上げるという運用をしており、EN, NFPA, JIS規格など、様々な規格に沿った製品を使っている。ISOではユーザーがリスクアセスメントを行った後に、装備選択の為に参照できるような性能要求事項と試験方法の規定にとどめ、実際の運用時に選択肢を制限するものであってはならない。 今後の作業を「アンサンブル」規格として作業を進めたいとの発言があったため、「アンサンブル」の意味について日本より質問をしたところ、議長としては、選択肢を狭めるつもりはなく、あくまでフルプロテクション(全身防護)を目的とするとのこと。日本としては防火服等の議論で課題に上がったアンサンブルの概念をイメージしてしまうが、真意はそうではないという旨の回答であった。

今後について、引き続きSC13, SC14との合同作業グループで進めていくこととなった。

7. 東京消防庁視察

東京消防庁 第三消防方面本部(東京都渋谷区)を視察。NBC災害(Nuclear-Biological- Chemical / 原発事故のような核による災害、炭疽菌事件のような生物による災害、サリン事件のような化学物質による災害の総称)に対する同庁の対応について、2組に分かれて以下の4部構成にて説明を受けた。

  1. NBC資機材・車両の現物展示と説明
    多種多様な資機材があり、危険物の種類(NBC)に応じて適切な資機材を選択・使用している。車両については除染車等について説明があった。
  2. VTRを中心とした座学説明
  3. 装着実演と参加者による装着体験 (写真左)
    危険物の種類・リスクの大きさに応じて装備を大きく3段階に分けて対応するとのことで、それぞれの装着の実演が行われた。また、災害現場に火災のリスクがある場合はレベルBの化学防護服の上から防火服を装着するという事であった。
  4. 消防救助機動部隊の化学物質事故対応の訓練見学 (写真中・右)

圧巻の訓練内容であった。想定は化学工場で火災が発生し、塩酸が流出しているというケースで、当日は雨の降る中であったが、現場到着から消火、塩酸の流出に対する処置・救助・除染・撤収までの一連の流れを間近で見学できるという、またとない貴重な機会となった。

 終わりに、東京消防庁 第三消防方面本部長 石川氏よりご挨拶があり、終了となった。SC14参加者にとって自身が参画する規格作りの意義・重要性をユーザーの観点で再認識させられるという、得難い経験となった。

8. プレナリー(全体会議)視察

TC94/SC14の日本のMirror Committee(国内対策委員会)の委員長である、小林恭一氏(東京理科大学)より冒頭の挨拶があり、全体会議が開始された。

SC14事務局からの報告として、これまで当該委員会で17の規格が出版済で、現在2~3の規格が出版を待っている状態であるという実績報告があった。

 2018年10月22日~26日の日程で、SC13とSC14のミーティングがスイスのジュネーブで開催されることとなった。議論される内容としてはSUCAM、ステーションユニフォーム、ファイアフードの更新、スウェッティング・トルソー、クリーニング・メンテナンスが予定されている。

 来年度の会議については2019年6月16日~21日の日程でNEN(オランダ規格協会)をホストとしてオランダ / Nijverdal(ナイフェルダル)にて開催される予定。

ラッセル・シェパード氏(オーストラリア)のSC14議長の任期が2022年12月末まで延長されることが承認された。

SC14議長のラッセル・シェパード氏よりホスト国である日本に対して、東京消防庁の視察とソーシャルイベントの東京湾クルーズを含めた全ての対応について感謝が述べられた。また、スポンサーの各社・団体に対してSC14からの表彰があった。

終わりに東京消防庁装備部 有海副参事・永堀係長より会議参加者に対する謝意と閉会の辞が延べられ、会議の全日程が終了となった。

以上