ISO/TC94/SC14メルボルン会議報告

株式会社廣瀬商会 藤波 雅彦


出典: 公益財団法人日本防炎協会


ISO/TC94 個人安全─個人用保護具(Personal safety protective equipment)/SC14 消防隊員用個人防護装備(Firefighters’ personal equipment)/WG’s(ワーキンググループ)&PG(プロジェクトグループ)会議

日時2019年11月12日~14日(木)
場所サウスメルボルン(オーストラリア) 
AFAC(Australasian Fire and Emergency Service Authorities Council) 
参加国アメリカ合衆国、イギリス、オーストラリア、スイス、ニュージーランド、日本
計6か国

日本参加者(順不同)

日本代表団団長小林防火服(株): 小林氏、(株)赤尾: 石川氏
アゼアス(株): 熊谷氏、鈴木氏
㈱イマジョー: 川口氏
エア.ウォーター防災㈱: 佐々木氏、横山氏
一般財団法人カケンテストセンター: 辻氏
(株)重松製作所: 池田氏
帝国繊維(株): 園部氏
帝人(株): 北村氏
デュポン・スペシャルティ・プロダクツ(株): 池田氏
(株)廣瀬商会: 藤波氏
通訳: 神元氏

計14 名

議 題

  • 個人防護装備のクリーニング及びメンテナンス
  • 林野火災用個人防護装備
  • 防火フード
  • SUCAM
  • CBRN
  • 現在進行中の検討規格の進捗他

スケジュール

午前

2019年11月12日

火曜日

2019年11月13日

水曜日

2019年11月14日

木曜日

9:30~12:30 ISO 23616 ISO 16073-9

CBRN

午後      
13:30~17:00 ISO 23616

ISO 11999-9

ISO 21808

WG1

WG2

WG3

WG5

議事

★WG1
【ISO 23616】 Cleaning, Inspection and Repair of Fire Fighter’s Personal Protective Equipment (個人用保護具のクリーニング、検査、リペア)

議長:リチャード・バヒミヤー氏(イギリス)

前回、オランダの会議においては、CDに対するコメントが約480あり、すべてを処理することが出来ずに終わった。今回はコメントを整理したものを8月に回覧し、そのコメントシートを元に会議が行われた。
①装備の中でマリンは意味が広範囲なので扱わない。Water rescue PPEも除外。
②基本的には建物火災・原野火災など、陸上の防火装備が適用範囲である。
③服については10年を目処に交換を薦める。他装備は次回協議する。
④製造者または製造者が認めた代理店が作業を行う。
⑤ヘルメット・手袋など各々の装備品について、その性格が違うので、慎重な議論が必要。
 今回の議論を基に11月末までにCD.2の原案を作成し、2月初旬に回覧をスタートし3ヶ月の国際投票にかけることになった。
⑥ SCBA(RPD)記載部の審議はWG1内で実施することになり、37件のJPコメントを審議し、ほぼ採用となった。


★WG3
【ISO16073-9】WILD LAND FIREFOOD

議長:リック・スワン(アメリカ)

小林団長、北村氏から粒子の侵入の項目のテスト方法についてのプレゼンテーションがあった。(詳細に関しては10月の国内対策委員会の資料参照)
結果としては、オプションなのでISOの試験も入れていいのではないかという意見もあった。消防士の命を守るための規格であるが実績がなくどこのラボもできなくISOの試験に取り入れることはできないとの結果になったがNFPA EN 2つの試験方法をオプションとして追加しアネックスに記載することになった。
結果として1つの試験方法から2つに増えた。
また、ISOの試験方法に関しては実績確認後持越す形となった。(WILDLANDには間に合わないがISO11999-9のフードの時にどうなるか) 
その後は各国から出されているコメントについて審議が行われた。
特に重要なポイントは下記のとおり。
①日本からのコメントとしては先述の北村氏のプレゼン内容だが、まず微粒子サイズ0.06~0.1µmという数値に関してはエリック氏(スイス)の間違いということで0.06~1.0µmだとのこと。(文章要確認)
②日本意見 TI24の数値に関してはアーネムで決定したとおり、WILDLANDのガーメントに合せること。
③フランスからの提案で縫い目強度は300kpaから450kpaに変更
④日本意見 ニットに対して5%は厳しすぎるという意見に対し、10%は大きすぎるということで否決された。
⑤GB64に関して水蒸気抵抗15はあまりにも甘すぎるということでイギリスの主張の10㎡Pa/Wで可決。ワイルドランドの被服の方も10㎡Pa/Wになっている
⑥洗濯50回は否決
被服のラベルには摩擦200回は書いてあるが洗濯に関してはなし。
今回の審議を反映しテストメソッドも考慮しミスも修正しドラフトを作成し回覧する。
1か月の猶予があるので取り急ぎ作成、1月末までに各国から意見をもらいFDISにすすめていく。最低1か月レビューの時間がある。

補足
:オーストラリアからの意見
都市部と林野の違い、紫外線による劣化 この2つに注目していきたい。
:アメリカからの意見
林野火災向け防護服の微粒子バリアに関し、ガーメントを作成しカリフォルニア州立大
学にてテスト開始。来年6月のハノーファー会議にて報告したいとのこと。


★WG2
【ISO11999-9】(防炎フード)

議長 エリック・バン・ウィリー(スイス)

既に発行されているISO11999-9:2016規格の見直し。6月のオランダ会議に提
案された見直し原案を更に改良した原案を審議。本会議前に審議されたWG3 ISO DIS 16073-9(森林火災用防炎フード)でも審議された浮遊塵埃へのフィルター性能評価試験について説明があり、2種の試験を取り入れることが決定。また、快適性能を評価する水蒸気抵抗試験について、フィルター機能があるものは当初案の15㎡Pa/WからWG3の要求性能である10㎡Pa/Wに合わせることになった。
12月末までにCD案を開示し、1月末の投票開始、その結果を来年6月のハノーファー会議で審議する予定。


★WG1
【ISO 21808】SUCAM(消防防護装備の選択、使用、保守、管理に関する規格)

議長:デイブ・マシューズ氏(イギリス)

消防防護装備の選択、使用、保守、管理に関する規格(PDTR 21808)の改正原案の確認を行った。オランダ・アーネム会議の際に、宿題になった呼吸器に関するパートについては、日本チームが今回の会議前に作業を行い提出していた。この部分について、特に意見は出なかった。また、コンパティビリティのパートで空白の箇所があるので、この部分については日本から素案を提出することにした。
その他、横山氏、佐々木氏より呼吸器のSUCAM規格(ISO 16975-1)の記載内容の紹介のプレゼンテーションを行った。このことにより、SC14のメンバーも内容を把握する良い機会になった。更に、SC14とSC15のJWGでは審議が捗っていなかったが、SC14の会議に参加することで、日本が有利に規格審議をすることが出来た。
今後のスケジュールは、2月頃までに原案を整え、その後CIB投票を行う予定になった。そ
の結果を来年6月のハノーファー会議で審議をすることになった。


★JWG1
【CBRN】

議長:デイブ・マシューズ氏(イギリス)

2019年6月のアーネム会議の直前に回覧されたNWIのドラフトを元に、10月7日締め切りで投票が行われ、賛成15票、反対4票でNWIP登録は完了している。今回は投票時に出されたコメント161件について議論を行った。日本から提出したコメント40件に対し、採択の成否は下記の通り。
・アクセプト(承認、採択)26件、
・PGで継続審議6件、
・リジェクト 8件(サイズ、MIST試験のサンプル数、ウイルステスト、ステルス性能(次回投票で再提出)、他)。

主な議論の要約
すでに発行されているISO17723-1との関係性が不明確である。気密服はNWI24588のクラス1装備よりも上位の防護性能を持つため、ユーザーがCBRN事案に直面した際にどの規格を参照するのか混乱する必要があるため、少なくともこの二つの規格の関係を明確にする必要がある。スイスからも同様の意見が出されたため、議長のデイブ・フロッシャム氏をリーダーとしたPGを作り、そこで議論をする。

PGの取り組みテーマ
・Gap Analisys ISO 17723-1、NFPA1994の差異分析。
・Definition 不明点の明確化
1)N,Rの定義
2)耐炎性能(ISO 13506、NFPA1991の“Poof”テストのどちらを求めるか。
  3)クラス1~4、N/Rの定義、性能基準値

今後のスケジュール:
2月中旬にCD投票を行う。NWI24588は48か月以内の成立を目指すものである。メルボルン会議にて合意に至らなかった下記の点について、PGを組織して議論し、次回ドラフトの修正時に反映させることを目指す。CD投票は、反映できる修正点を反映させる。


★WG5
【非火災救助】

議長:石川修作氏(日本)、 書記:久保徹也氏(日本】(不在)

冒頭、小林団長より、レスキュー用ハーネスを一連のWG関連規格に盛り込む案が起案されたが、SC14議長のシェパード氏より、この問題は他のWGも包括した問題なので、取り扱いは難しいのではないかとの意見が出された。
石川議長より、2018年の東京会議から始まったWater Rescueに関する議論の経緯について説明があった。その中で前回、オランダ会議で英国から出されたスコープの案について、そのコメントを求めたところ、8月に同じく英国から一つのコメントしかなかったことが説明された。その内容は氷や泥などの不安定な場所からの救助装備も含めるべきであるとのことだった。
オーストラリアのアーサー・ティンダー氏がWater RescueのPGリーダーに立候補したことが石川議長より紹介され、参加したメンバーもその就任に同意した。
アーサー氏から今後の作業について以下の提案があった。
①NWIPがN385により回覧されたが、SC14に回さず、一度進行を止めて、方向性が決まった後に、NWIPから作業を進め、登録後36ヶ月の規格化に向けた議論を進める。
②規格の作り方について、ISO18639のようなパート分けにするか、一本の規格で作るかを決
める。議長としては18639と同じパート分けの構造を推した。
③インターネットにより、各パートのエキスパートの立候補を募る。
④関係する各国にある関係国際機関に可能限りの現有規格の調査をする。

石川議長からも、SC14の参加者は建物火災の専門家が主なので、各国のWater Rsecue 専門家の意見を求めるように会議出席の各国メンバーに要請をした。
これからの第一段階として、メルボルンの会議の会議報告をWG5メンバーに回覧し、WaterRescueの各パートについてエキスパートの立候補を募ることから作業を開始することとされた。

会議を終えて
会議を終えて